「自分を信じる力。」(by石川梨華『モーニング娘。&つんく♂2』より)

milliondaniel2005-08-03

プロローグ

2005年5月7日土曜日。天気は実に快晴。5月の初めだというのにこの暑さはどこから来ている物かと。予報では雨かと危ぶまれていたが、分かりやすいほどの晴れ。
そこは武道館。噂に聞く武道館、これが武道館かと。映像などで見知ってはいたが、実際にその麓に立ってみると意外とこぢんまりとした印象を受ける。
その日、そこではモーニング娘。の2005年春ツアー「第六感ヒット満開!」の千秋楽が行われるのだ。それにしても何というネーミングか。口に出すのも憚られるが、こうやって書き込むだけでも体温が2,3度上がりそうなタイトルだ。このダサさが内容と一つのギャップを産みだすというのが狙いなのかどうなのか。(後日、夏秋ツアーの更なる衝撃的なツアータイトルを知って一瞬気を失った。)
その日、その武道館で石川梨華が卒業する。何という場所に自分は居るのか。なんたる幸運。ここに誘(いざな)ってくれた全ての人に感謝したい。
そもそもコンサートという物自体、実に9ヶ月ぶりである。9ヶ月、そのブランクは長いのか。しかし体は昔の記憶を刻み込んでいるもので、その非日常の空間にすぐ溶け込んでしまった。この非日常が日常であった日々、それを思い出しながらぶらりと会場周辺を散策してみる。「売り切れ」の札が目立つグッズ売り場、色鮮やかな衣装に身を包んだファンたち、何故か会場に乗り込んできた黒いリムジン(お金持ちは何処にでも出没する)。あまり刺激のない土地で暮らす自分にとって、これらを目に入れるだけでも金を払う価値がある。
9割9分が他人という場において、たまに見かける知り合いというのは非常にありがたいもので、いろんな方に声を掛けさせて貰った。一度顔と名前が一致した人物は記憶しているという実に接客業向きの自分の執念深さである。これほどいろんな方と遭遇する確率は相当に低いと思うが、ほぼ没交流の土地に住む自分に何かの力が働いて、いろんな出会いを運んできてくれたのかと勝手に想像してみる。


日が沈み、人の流れに身を任せるように武道館に入る。武道館、その中は「箱」というよりは「筒」。あまりに巨大な円筒であった。まるで天に向かって何かを放つかの如き形。


この日の主役石川梨華のM字開脚という驚異のジャケットだが(この全身エロ弾頭め!)、このDVDの映像を所々切り取りながら巨大な筒の中でその日感じたことを、2ヶ月以上経った今ゆっくりと筆を執り、映像と共に振り返ってみようと思う。

1.THEマンパワー!!!

多くの不安の中始まったが、この日の連番者の数年前からは想像もしなかったパフォーマンスに驚愕する。立派なZ戦士に成長しました。

2.浪漫〜MY DEAR BOY〜


一年近いブランクを物ともせず、しっかり振りを記憶していた自分の体にここでは驚愕してしまう。じわじわと熱い血潮が蘇ってくる。

7.LOVEマシーン


そういえば、このメンバーの中にはLOVEマシーンが発売された頃に在籍していた人間はもう一人も居ないという事に気付く。そう、この少し前に全員居なくなってしまったのだ。
あの日、仕事から帰ってきたらモーニング娘。のリーダーが代わっていた。落鳳。まさに片腕の軍師を急に戦禍で失った思いだった。願うならば、自分は矢口真里モーニング娘。をここで見たかった。
この曲は全ての意味で転換点。これからも、多くの人の中でこの曲を聴く度にいろんな事を思い出すだろうけども、俺は笑顔で右腕を突き上げているんじゃないか。


それにしても、

この「DISCO!」はなかなか良かった。2005年型LOVEマシーンを感じさせるファンクさ。その突き刺した指の向こうに何があるんだろうか。

10.紫陽花アイ愛物語


当初掲げた「和」のテイストがいい感じで分泌され始めた美勇伝。一つの形ができました。さあこれからどんな伝説を作ってくれるのか。作ってくれんと困る。

13.ロマンティック浮かれモード



この人がもたらした物は混乱か、もしくは混沌か。モーニングに安定をもたらす者なのか。違うのか。それともまだ成就されていないだけか。
会場中のミキティ・クロリアン値が一気に高まる中、自分はやや冷静にその様子を少し高みから眺めていました。この混沌は大いなる副産物なのか。もしくは何かを待ちわびる熱気か。混沌の姫神、今ここに再臨。

15.ふるさと(高橋愛Ver.)


高橋愛の歌う「ふるさと」に、東京の風を感じたのは気のせいだろうか。それもまたあなたの「ふるさと」。また再びこの曲を歌う時、そこに福井の風が吹き出すかどうか。それを楽しみにしていましょう。それでも、彼女の歌は人の耳を惹き付けるものがあります。

18.直感〜時として恋は〜


そうだそうだそうだ、全くその通り!


ツアータイトルである「第六感」にあたる「直感」。つまりこの曲はツアーのテーマソングでもあるわけです。そんな勝手に決められても困る。
アルバム「愛の第六感」を聴いた時から惚れてました、僕で良ければつきあって下さい。いやいや何を言っているのだ俺は。しかしこの曲には第一印象からベタ惚れで、果たしてどんな振りが付くのか勝手に予測までしていたのです。そして実際にそれを目にした時、その予測が半分ほど当たっていた事に妙に高揚した自分がいました。でもやっぱり本家の振りの方が、いいね。そりゃそうだそうだそうだそうだ全くその通り。

DVDでは確認しづらかったのですが、正面から見て右側の花道での高橋・道重コンビの振りが大変なことになっていたという事実をここで表明します。一言で表せば、「バカ正直」。バカとは何だバカとは。ひええごめんなさい。

19.メドレー


画像は「レモン色とミルクティ」。ゴロッキーズ高橋抜きで披露されたこの曲はこれまた新時代の到来を予感させるフレッシュさ。一人壮齢の藤本美貴さん(20)も意外とノリノリでやっておりました。レモン色のTシャツ、Tシャツ…は正直言ってダサい。

「...好きだよ」で規定以上のハシャギっぷりを披露する石川梨華さん(20)。

20.すき焼き



妙に格好良かったシーンを二つ抜粋。
沖縄民謡の曲調に合わせて衣装も沖縄風に。こういうちょっとした心遣いが嬉しいのです。こんな日はやっぱすき焼き。

21.Go Girl〜恋のヴィクトリー〜


幸せの黄色い旗を振りかざし。すき焼きと合わせて小技を連続で繰り出してきました。嬉しや嬉し。


これまで、そしてこれからもモーニング娘。はフラッグ・シップたり得るのか。

想い出

ここまでのコンサート中に自分の中で一番大きかった気持ちは、「懐かしい」でした。それは、コンサート自体9ヶ月ぶりというブランクから来る物でもありましたが、いろんな時の想い出がその時の曲と共に蘇ってきて、それによって「懐かしい」と思ってしまったのです(だから新しめの曲に対してあまり印象が無かった)。しっかり体も振りを覚えていたりなどして、当初の不安もどこへやら、たいそう楽しませてもらいました。
思うにコンサートとは、自分の体・脳・そしてステージ上の演者という3要素が織りなす物ではないでしょうか。ステージ上の演者が歌を奏で、それを脳が認識して、体を動かす。至極当たり前のような事なのですが、それを恐ろしいくらい実感できたのが今回。ステージ上の娘たちが奏でる曲があの日の想い出やら記憶を再稼働させ、体を動かす。


よくよく見れば、今回のステージセットは遺跡。それはあの日の記憶を刻み込んだ遺跡だったのかもしれません。

まごころを、君に


サイリュウムで演出される儀式。マンネリ化してきていると言われますが、自分はそこに日本古来の「祭り」のような物を感じている人間なので、毎回楽しみにしています。5年続けば伝統だ。
暗闇の中のピンクも綺麗でしたが、照明が再び灯った時の明るい中でのピンクもまた一段と綺麗でした。やはりあの人には明るい場所がよく似合う。
この光景を見て、エヴァンゲリオンの最終話を思い出しました。

石川梨華とは。


卒業への思いを綴った手紙の朗読。


自分は、石川梨華はCGとかアニメのような存在だと考えていました。言い換えれば、「出来過ぎ」。非現実的なその出来映えは最早人間のそれではない。危険な考え方のように聞こえますが(アニメ声だからかと言われれば、それもちょっとあるかもしれないが、それも含めた上で)、ラブコメとかのヒロインが現実世界に飛び出してきたらきっとこんな感じになるだろうという考えからです。
似たような存在として松浦亜弥が挙げられますが、彼女は「お化け」と俺は考えます。これはまたちょっと違う。
この手紙の朗読も、完璧でした。まさに「出来過ぎ」。素晴らしい。

27.初めてのハッピーバースディ


そしてここで投下されたのは石川梨華ソロという最大最後の核弾頭。これは本当にいい物を見せて貰ったという気持ちが満開でした。ホント、マンガやねえこの人は。

贈る言葉


藤本「ぶつかった事もあったけど…」
石川「あったよねえ」
俺「あったのか!!(やっぱり)」
前回の飯田圭織卒業からだんだんぶっちゃけの場みたいになってきましたこの人の贈る言葉。言えるって事はもう過去のことになってるということです。あの殴り合いの記憶も蘇ったでしょう(妄想)。


一見気丈な田中れいながボロボロ泣き、気弱そうな道重さゆみがしっかりと、その上「本当は一番可愛いのは石川さんです」などと最高の言葉を贈る(後で言質として取られること請け合い)。だからモーニングは面白い。そして人間は面白い。



吉澤「まあ、頑張ってくれや」
「くれや」って。でも逆にそこには二人の強い絆が感じられるのです。もう何の心配も不安もないからこそ言える適当な励まし言葉。今考えれば、「頑張って」「頑張ってね」「頑張ってください」「がんばんな」「頑張れよ」というどの頑張れよりもこの「頑張ってくれや」が最も適していた言葉のように思えるのです。それが、最もこの二人らしい。

ふたりと、みんなと。

世界のみんなが、いつまでも平和でありますように。



湿っぽさは全くなく、非常に楽しい、明るい卒業式でした。高橋が「こんな卒業ができたらいいな」という事を漏らしてしまう気持ちもよく分かります(高橋の贈る言葉に関してはこの台詞ばかりに目を奪われがちだが、実は他に相当いい事を言っている)。
それは、「卒業」という物に対して、恐れを抱かなくなったからでしょう。慣れてしまったのも事実かも知れませんが、「卒業」は「喪失」では無いという事がよく分かったからだと思います。それはやはり、新しいステージへのステップなのです。


卒業、それは、その人を改めて見直し、そして新しい場所へ旅立つその人へ餞の花束を贈ること。


石川梨華さん、卒業おめでとうございます。その未来に幸あらんことを。