ちぢむ!

昨日の話になりますが、日テレ系で放送されているアニメ版ブラック・ジャックは生物が縮んでいって死ぬという謎の病気を取り扱ったエピソードでした。ブラック・ジャックは基本的には実在の病気を取り扱うのですが、たまに実在しない架空の病気を題材にする事があります。この「ちぢむ!」というエピソードは文庫版では第3巻に収録されていて、かなり印象に残った記憶があります。

Black Jack―The best 15stories by Osamu Tezuka (3) (秋田文庫)

Black Jack―The best 15stories by Osamu Tezuka (3) (秋田文庫)

結局病気が何の原因で起こったのかは謎のままですが、この病気を研究しながら自らもこの病気に冒されて死んでいく戸隠先生はこう言い残します。

これは神の警告だ…
(中略)
かぎられたこの地球の食糧を生き物全部にわかちあうには、体を縮小しなればだめだという意味かも…

この戸隠先生の最期の言葉を受けてブラック・ジャックはこう叫びます。

神様とやら、あなたは残酷だぞ!
医者は人間の病気をなおして命を助ける!その結果世界じゅうに人間がバクハツ的にふえ、食糧危機がきて何億人も飢えて死んでいく…そいつがあなたのおぼしめしなら…


医者はなんのためにあるんだ!!!


医者の存在意義とは何か、命を救うとは何か。ブラック・ジャックにおいて手塚治虫が最も問いたかった事はこの事なのでしょう。人の生き死には一つの定め。それにメスを入れるという行為はいったい何を意味するのか。敢えてこの作品中には答えは出ていません。それは、医の道を志す者がそれぞれ見つけなければならない事なのです。


来週は「ピノコ誕生」。原作を知らない一途な子供たちがあのピノコが実は腫瘍だったという衝撃の事実を思い知らされる回になるでしょう。泣くかもしれんぞ。